収益性と効率性を重視した戦略で黒字化を実現
強固になった経営基盤で機動力を高めていく

社長インタビュー 代表取締役 二木 渉

 

世界的に旅行需要がいっそう高まり、訪日客数が過去最高を更新。出国日本人数も回復基調となった2025年。「グローバルを舞台に、デジタルと体験の力で未来の観光を創造する」をテーマにOTA事業および観光IT事業を展開したベルトラが得た成果と、今期の計画を達成するためのポイントについて二木渉社長に聞きました。

円安の進行と地政学リスクの高まりで計画未達も
2019年以来の黒字化を達成

2025年12月期は2019年12月期以来の黒字化を達成しました。これは、コロナを乗り越え、再び自力で利益を生み出せる体制が整った証ですので、胸を張って伝えたいと思います。

 

一方、期初の計画は未達となりました。要因としては、為替市場で円安が進み、ボラティリティの高い相場が続いたこと、そして、地政学リスクが高まったこと等が挙げられます。また中国政府が行った日本への渡航自粛呼び掛けにより、11月以降訪日客数が急激に減少したことも一部影響しました。

 

そのような環境のなかで、外的要因の影響を受けにくい強固な収益基盤の構築と、コスト削減(人件費と広告宣伝費の圧縮)による筋肉質な体制づくりを着実に進めたことが、6期ぶりの黒字回復達成に寄与いたしました。

営業収益2025

2025年12月期は2019年12月期以来の黒字化を達成しました。これは、コロナを乗り越え、再び自力で利益を生み出せる体制が整った証ですので、胸を張って伝えたいと思います。

 

一方、期初の計画は未達となりました。要因としては、為替市場で円安が進み、ボラティリティの高い相場が続いたこと、そして、地政学リスクが高まったこと等が挙げられます。また中国政府が行った日本への渡航自粛呼び掛けにより、11月以降訪日客数が急激に減少したことも一部影響しました。

 

そのような環境のなかで、外的要因の影響を受けにくい強固な収益基盤の構築と、コスト削減(人件費と広告宣伝費の圧縮)による筋肉質な体制づくりを着実に進めたことが、黒字回復の達成に寄与いたしました。

OTA事業の収益性改善、LINKTIVITYへの投資
クルーズ事業の本格展開に力を注いだ1年

2025年12月期の重点施策は大きく分けて3つありました。

 

1つめは「OTA事業の収益性の改善」です。利益率の高い体験商品の販売を強化するため、人員配置の最適化と運営費用の見直しを行いました。また、OTA事業で独自に構築したBtoBのアセットを積極的に横展開し、旅行代理店や観光業界の企業への導入を推進。旅行事業者に対する広告ビジネスの拡大にも取り組みました。

 

2つめは「LINKTIVITY(観光IT事業)への投資」です。昨年から取り組んできた提携パートナーの獲得をさらに強化しました。また、チケットの予約・発券、QRコードでの入場に必要なプラットフォーム開発への投資にも注力しています。それが先日発表した「沖縄美ら海水族館」との販売連携につながりました。インフラ構築に対する投資は費用面が先行する形になりますが、グループ全体の収益を押し上げると確信しています。

 

そして3つめが「クルーズ事業の本格展開」です。2025年3月にスタートした「VELTRAクルーズ」の取扱高は間もなく1億円を突破する見込みで、想定以上の反響に大きな手応えを感じています。国交省も、現時点で約22万人のクルーズ人口が今後も増え続けていくと試算。「2030年までに日本人のクルーズ人口を100万人とする」という目標を掲げています。マーケットの成長が期待できるなかで、ベルトラはAIを活用したサービスでクルーズ事業を推し進めていきます。

2025年12月期の重点施策

2025年12月期の重点施策

進化するテクノロジーで実現できるサービスを見極め
競合他社との差別化を図るため、3カ年の概念を取り払う

中期経営計画(2025年~2027年)については、2026年2月13日の取締役会において取り下げることを決定いたしました。その背景には、生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進化と普及があります。この時代に合致した経営計画は、3年先を見据えるのではなく、今、この瞬間も進化を続けているテクノロジーで実現できるサービスを見定め、迅速に実装することです。

 

その一方で、地政学リスクは高まり、為替市場ではボラティリティの高い相場が続いています。また、競合他社との差別化も難しくなっています。こうした状況を踏まえると、従来の計画の維持に固執すれば実態との乖離を招く恐れがある。私たちはそう判断して、3カ年計画という概念を取り払いました。今後は勝てる戦略を考え、迅速に意思決定を行う経営スタイルへ移行します。

経営体制の変革について

当社は2025年夏以降、世界市場でのリーディングポジション奪回に向け、次世代の中堅・若手を中心とした新たな経営承継(サクセッションプラン)を見据え、最適な経営・執行体制の検討を進めてまいりました。今般、具体的な体制が整ったことから、以下の3点を主眼に経営体制を刷新いたします。

 

①「経営の監督・執行の分離による戦略執行スピードの機動力向上と迅速化」
取締役会は「中長期戦略の決定および経営執行の監督」に特化し、社外取締役中心の構成により客観性・透明性を確保します。一方、執行側には最高責任者(CxO)を配置し、迅速な意思決定と責任の明確化を図ります。

 

② 「サクセッションプランの推進」
共同創業者の荒木篤実氏を取締役に迎え、創業時のベンチャー精神を継承するとともに、同氏の国内外での豊富な経営経験を活かし、次世代リーダーの育成と経営承継プロセスの構築を推進します。

 

③ 「成長モデルの再構築と連結グループ経営の深化」
重要子会社リンクティビティ株式会社の代表・孔成龍氏を親会社取締役に迎え、同社の成長ノウハウをグループ戦略へ反映します。子会社トップが親会社の意思決定に参画することで、グループ経営およびリスク管理体制を一層強化します。

 

取締役

氏名

現役職

再任・新任の別

二木 渉

代表取締役社長 兼 CEO

再任

荒木 篤実

新任

孔 成龍

リンクティビティ株式会社

代表取締役社長

新任

カスバ―ト・ロドニー

社外取締役

再任

池田 哲司

社外取締役(常勤)監査等委員

任期中 (2年目)

毛利 正人

社外取締役 監査等委員

任期中 (2年目)

鈴木 学

社外取締役 監査等委員

任期中 (2年目)

新執行体制 (CxO体制)

職位

氏名

役位

重点ミッション

CEO

二木 渉

代表取締役社長

グループ全体経営の総括

CFO

皆嶋 純平

上級執行役員

財務・M&A戦略、ガバナンス体制強化と運用の徹底

CHRO 兼 CAO

倉上 智晴

上級執行役員

組織変革、リーダー育成、人事/総務/法務の全般とリスク管理

COO 兼 CTrO

バート 真弓

―(注)

グローバルOTAのCX刷新、及び事業変革の主導

CTO

林 佑樹

―(注)

技術基盤の統合、AI/Data活用による開発組織の高度化

CSO

小林 鉄平

執行役員

経営戦略の策定、ローリングプランの運用管理

経営執行のプロフェッショナルとして最高責任者(CxO)及び上級執行役員を配置し、取締役会の 監督のもと、実行スピードを最大化させてまいります。

 

(注) CxOの職位は、専門性に基づき各領域の最高責任者として任命するものであり、当社の役員規程に基づく「執行役員」の役位とは切り離して配置しております。

 

精度の高い予実管理で組織の機動性を向上
LINKTIVITYへの投資は市場動向を見て慎重に

2026年12月期の業績は、営業収益50億円(前年同期比+9%)。営業利益は3億8,000万円(前年同期比262%)で計画しています。達成のポイントは、即時に経営判断を行い実行に移すことです。そのためには精度の高い予実管理が不可欠です。実際の進捗状況との差異を埋め、不確定要素を排除することによって組織の機動性を向上します。

 

その一方で、コストコントロールによる収益改善にも引き続き取り組みます。LINKTIVITYのプラットフォーム事業への投資も継続しますが、現在はインバウンド市場の予測が難しい状況でもあります。特に上期については慎重に進める必要があると考えています。

 

あわせて積極的に取り組みたいのは、サービス・商品ラインアップの拡充です。旅行者の増加と同じくらい、使命感を持って注力することが売上の拡大につながると思っています。

営業収益と営業利益

ベルトラ海外旅行市場 セグメント別取扱高規模(FY2019)

営業収益

営業利益

組織再編、構造改革を推し進め
「心ゆさぶる体験」をより多くの旅行者へ

5年もの間、株主の皆様には大変なご心配をおかけいたしました。厳しい時期を一緒に乗り越えていただいた皆様に、改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 

今期もベルトラは組織再編、構造改革を推し進めます。新たな経営体制のもとで収益力を高めながらさらなる成長を遂げ、「心ゆさぶる体験」をお届けする日本でナンバーワンのプラットフォームとして企業価値を高めてまいりますので、力強いご支援を何卒お願いいたします。

ベルトラの主力級サービスへ
クルーズ事業が秘めた可能性とは

事業責任者インタビュー

VELTRAクルーズ 藤田 健太郎

 


世界中のクルーズ体験をリアルタイムで検索・予約できるオンラインプラットフォーム「VELTRAクルーズ」のスタートから1年が経過。現在までの反響と今後の展望について、事業責任者の藤田健太郎にインタビューしました。

Q. クルーズ事業をスタートした背景について教えてください。

A. クルーズ市場の可能性と構造的課題の両方を見極めたうえで、参入を決断
OTA事業で培った強みで市場そのものを変革させられる

当時、二木社長はベルトラの新たな成長領域としてクルーズ旅行に着目しており、参入の可能性を具体的に模索していました。そうした中で、世界最大級のクルーズ会社であるMSCクルーズの日本支社、MSCクルーズジャパン、そして大手通販会社のクルーズ事業を成功に導いてきた荒木辰道氏が設立した Otium Japan Inc. と出会いました。両社をつないでくださったのは、ベルトラ創業者の荒木篤実氏です。

この機会を事業化に向けた具体的な一歩と位置づけ、両社の協力のもと事業構想の策定を進めました。

 

市場調査を進める中で明らかになったのは、流通構造やオペレーション面でクルーズ市場のデジタル化が十分に進んでいないという現実でした。
たとえば、依然としてFAXや表計算ソフトを中心に業務を行う船会社も多く、旅行代理店がクルーズ商品の新規取り扱いを希望しても、オペレーション負荷の増大を理由に新規契約が進みにくい状況があります。こうした構造が参入障壁となり、市場の拡大を阻んでいました。

しかし私たちは、この課題こそが機会であると捉えました。当時、アジア市場向けにクルーズ予約・販売をオンラインで完結できる仕組みは存在していなかったため、OTAとして世界中の体験事業者と旅行者をオンラインでつないできた当社のノウハウを活かせば、市場構造そのものを変革できると判断しました。

 

業務提携契約を締結した両社がベルトラに特に期待していたのは、アジア圏におけるクルーズ人口の拡大と、日本市場のデジタル化推進です。日本人海外旅行者向けプラットフォームを構築してきた当社であれば市場を広げられる、さらに国内の旅行代理店ネットワークを束ね、DXを牽引できる存在になり得る――その共通認識が提携につながりました。

 

こうして2025年3月、クルーズ旅行に特化した予約サービス「VELTRAクルーズ」を開始しました。クルーズ市場における流通の在り方を変え、アジア発の新たな成長市場を創出していくことが、私たちの挑戦です。

Q.アジア市場の成長はなぜ期待できるのでしょうか?

 

A. 世界的な拡大トレンドとは対照的にアジア市場はほぼ未開拓
閉鎖的だった市場構造の開放で、アジア市場は大きく拡大できる

世界のクルーズ人口は2023年にコロナ以前の水準を超えており、2024年には約3,460万人に到達しました。2028~2029年には4,000万人を超えると予測されています。

一方で、この巨大市場におけるアジア全体のクルーズ人口比率は0.5%未満にとどまっています。米国が約4~5%であることをふまえると、アジア市場には大きな成長余地があるといえます。

クルーズ市場のセグメント

アジア市場が大きく後れをとっている要因の一つは、十分な情報発信がなされてこなかった点です。現在就航しているクルーズ船の約80%は、実は、ドレスコードを気にせず乗船できるカジュアル客船で、料金も一泊あたり1~2万円が中心です。しかし、こうした基本的な情報が十分に浸透しているとは言えません。

その背景にはシニア層を中心とした販売モデルや、旧来の商習慣が残る市場構造があります。競争力を高める必要がない市場環境をつくりあげてしまっていたことから、積極的なプロモーションや新たな顧客層へのアプローチが進んでこなかった側面もあります。

 

私たちは、この構造こそが成長機会であると捉えています。

Q.「VELTRAクルーズ」のターゲットユーザーと商品ラインアップを教えてください。

 

A. ミレニアル世代を中心とする若年層をターゲットに見据える
目指すのは、世界中のクルーズ旅行を網羅するプラットフォーム

「VELTRAクルーズ」の開始にあたり、まずはMSCクルーズが提供する5,000以上のコースをラインアップしました。最終的には世界のクルーズ旅行を取り扱うことを目指し、商品は順次拡大していきます。

 

大きなターゲットは、ミレニアル世代を中心とする若年層です。既存の旅行代理店が主に富裕層やシニア層を対象としてきたのに対し、私たちは「これまでクルーズが選択肢になっていなかった層」にアプローチします。
クルーズ旅行を特別なものではなく、新しい旅のスタイルの一つとして提案することで、新規需要を創出し、アジア市場全体の拡大につなげていきます。

Q. ベルトラの参入によってクルーズ商品の予約・販売はどのように変わりましたか?
 

A.世界の旅行者に後れをとることなく予約が可能に
すべての代理店がクルーズ商品を扱える可能性も

ベルトラにより、クルーズ商品の予約・販売に大きく2つの変化が生まれました。

1.  旅行者向けの利便性向上

従来、日本の旅行代理店ではクルーズ商品の予約準備に1カ月以上かかることもありました。「VELTRAクルーズ」はAPI連携により、価格設定や商品ページ作成も迅速に実行できます。これにより、旅行者は希望する客室を他国の旅行者に後れをとることなく予約でき、さらにAIによるコスト削減で最安値での販売も可能になりました。

 

2. 旅行代理店への開放性

これまでクルーズ商品を扱える正規代理店はごくわずかで、多くの代理店は旅行者からの問い合わせ対応が難しい状況でした。「VELTRAクルーズ」の在庫管理・予約販売機能によって、日本全国の旅行代理店がクルーズ商品の販売を促進する機会を持てるようになりました。

このように旅行者・代理店双方にメリットが生まれ、日本とアジアのクルーズ市場全体の可能性が大きく広がったと言えます。

Q.「VELTRAクルーズ」がスタートして1年がたち、現在の進捗状況と課題を教えてください。

 

A. 旅行者の反応は早く、船会社との関係は強固に
課題の船会社DX化は、現場と共に一歩ずつ進めていく

販売はスタート直後から好調で、予約金額は間もなく1億円を突破する見込みです。(インタビュー2026年2月当時)

船会社からは「大きなプロモーションをしていないのにこの反響は驚き」と評価されており、特に問い合わせ対応の負担が軽減された点が喜ばれています。

 

旅行者はWebサイトで予約し、Q&Aやチャットで疑問を解消できるため、電話対応は全く不要です。また、新規代理店にもベルトラのプラットフォームでの販売を推奨していただくなど、高い評価を得ています。

提携する船会社は今後も増加予定で、現状のリストを加えるとアジア市場の約70~80%をカバーできる見込みです。2026年1月からは旅行代理店向けのBtoBtoCシステム提供も開始しており、現在5社と契約、2026年12月期から売上計上を見込んでいます。

 

一方、想像以上に難度が高いと感じているのは、船会社に対するDX化の推進です。この業界にAPIを持ち込んで在庫管理を試みたのはベルトラが初めてであり、技術的な問題に直面するケースも少なくありません。

特に日本国内の客船会社では、在庫管理などの業務を今も完全なオフラインで行っているだけに、導入への道のりはかなり険しいです。しかし、現場の方々が閉鎖的なビジネスに強い危機感を持っており、業界への影響力を高めて改善を共に進めていく方針です。

Q. 今後、クルーズ事業はどんな形で成長させたいと考えていますか?

 

A. クルーズ×寄港地観光で旅行者の満足度を最大化
クルーズ事業を新たな旅の定番スタイルに

2028年度に予定されている日本発着のディズニークルーズ就航により、クルーズ船への旅行者の関心はさらに高まると考えています。ベルトラのプラットフォームを導入すれば、どの旅行代理店もクルーズ商品を販売できるため、事業の拡大とともにアジアのクルーズ市場全体の活性化が期待できます。

その中で特に大きな可能性を感じているのは、寄港地観光に特化した商品・サービスとプラットフォームの開発です。現在、船会社が提供する団体向けの寄港地観光パッケージ(大型バスのツアー)を利用する乗客は約40%で、リピーターは多くありません。ツアーに参加しない旅行者はタクシーで観光地に向かいますが、多くの寄港地では交通網が十分に整備されておらず、タクシー乗り場には長蛇の列ができ、2時間待ちも珍しくない状況です。

 

ベルトラは、この状況を変えることができると考えています。OTA事業で磨き上げてきた着地型観光商品の開発力と販売網、そしてLINKTIVITYで培ってきた販売・管理システムの開発・提供のノウハウなど、クルーズ事業に活かせる資産は豊富にあります。それらの強みを最大限に活用し、クルーズ旅行がより身近で、誰もが選べる旅のスタンダードに育てていきます。

 

VELTRAクルーズ

https://cruise.veltra.com/