リンクティビティが提供する
シームレスかつボーダレスな社会
リンクティビティ株式会社 代表取締役 孔 成龍
2020年に、交通・観光・地域の活性化を目指し設立したリンクティビティ株式会社。サービス開始の背景と今後の成長構想について孔社長に聞きました。
デジタル化が遅れている旅行産業の課題を、テクノロジーの力で解決したい
リンクティビティは、人と移動(交通)・人と体験(観光)・人と人(地域)をつなぎ、シームレスかつボーダレスな世界を実現させるというミッションを掲げ、海外オプショナルツアー予約サイト「VELTRA」の新会社として、2020年に誕生しました。
事業を始めるに至った理由は2つあります。1つは、日本各地には素晴らしい観光資源がたくさんあるものの、その地域に土地勘のない旅行者がその場所に辿り着くのが難しいということです。 なかでも高齢化や過疎化が進んだ地方では、拠点となる空港や鉄道の駅から観光地に辿り着くまでの、バスやタクシーといった二次交通の課題が深刻です。地域を活性化させるには、交通と観光をもっとシームレスにつなげて旅行者の利便性を高める必要があると考えました。
もう1つは、交通機関や観光施設のデジタル化が遅れているということです。日本はeチケット化が進んでいないため、特に海外からの旅行者はいまだに紙などの実券を手に入れて、窓口等で引き換える必要があります。私も中国から日本に旅行した際、紙の旅券が郵送されるのを待ち、それを持って日本に行った経験がありました。 即時にデジタルチケットを発行できず、紙の実券が送られてくるのを待つのは、とても効率的とは言えません。交通会社や旅行会社からしても、わざわざ旅行者に実券を郵送するのはオペレーションとしても非常に手間となります。提供側も利用側も非効率なこの状況を、テクノロジーの力で変えたいと考えました。 というのも、私はもともとエンジニアで、ITを使って社会を良くするべく、SAMSUNGやパイオニア、LINEでシステム開発や事業開発に携わってきました。色々な領域がデジタルによる恩恵を受ける一方で、旅行産業はアナログから抜け出せていませんでした。そこにIT×旅行の可能性を感じ、VELTRAに入社し、リンクティビティを立ち上げました。
交通・観光・体験・人をつなぐプラットフォームを提供
リンクティビティが提供しているバリューは2つあります。1つ目はサプライヤーである鉄道・バス・観光施設・催行会社や、旅行会社に対してデジタルソリューションを提供していること。2つ目は、サプライヤーと国内外の販売チャネル(旅行会社・OTA)をつなげて、送客を強化していることです。
このビジネスモデルを作るにあたり、まず取り組んだのがデジタル化と新しい流通構造の開発でした。今までは、業界全体で共通の仕組みがなく、各社でシステムやオペレーションが異なっていたため、サプライヤーの鉄道会社や観光事業者も、販売チャネルの旅行会社や航空会社、ホテル、MaaS事業者等も、それぞれが個別対応をする必要がありました。
そこで、サプライヤーに対して、eチケットシステムや在庫管理システム、販売・精算システムなどのデジタルソリューションを提供し、すべてをオンラインで一元管理できるようにしました。そしてリンクティビティは販売チャネルと連携し、サプライヤーとの間に入ることで、N対Nで煩雑だった流通構造を、1対1対1のシンプルな流通構造に変えたのです。
観光領域のプラットフォームはたくさんありますが、その中でリンクティビティの優位性は、私鉄や地下鉄、JRなど交通領域を軸にして、各社とシステムを連携したこと。 鉄道会社とのシステム連携は、コスト面やセキュリティ面からも簡単なことではないため、導入されている事業者からは「リンクティビティで一元管理したい」との声をいただいています。結果、他社の参入障壁がとても高いサービスとして成長することができたと考えています。
QRコード1つで交通、入場が可能に。旅行者の利便性も格段にアップ
リンクティビティがサプライヤーと販売チャネルの間に立ったことで、旅行者の利便性は格段に上がっています。今までは、紙のチケットを駅の窓口等に持って行って引き換えるなど、アナログな行動が発生していましたが、今は券売機にQRコードをかざせばチケットが自動発券できるようになりました。
現在、QRコードでそのまま改札を通れる仕組みと、交通も観光施設も一つのQRコードで利用できる仕組みを構築中ですので、今後は飛行機や鉄道の予約・購入から観光施設の予約・購入・体験まで、一つのサービスとしてつながる世界が実現するでしょう。
また、地域からしてもリンクティビティが与えるインパクトは少なくありません。これまでは、地域の観光資源や体験商品を多くの人に届けたくても、地域単体で魅力を伝え、観光地と交通をつなげて送客することに高いハードルがありました。それがリンクティビティによって地域の魅力発信と集客の両方が実現するようになったのです。
近い未来、当日の天候を考慮した現地の観光地や体験を“ホテルの客室”でレコメンドし、旅行者が即時予約して出かけられる仕組みも検討中です。より地域社会に貢献できるサービスになっていくと考えています。
日本から世界へ。シームレスでボーダレスな社会を目指して
2020年の設立以降、リンクティビティは導入するサプライヤーや連携する販売チャネルを一社一社増やしながら、よりシームレスな移動を実現するための実証実験や、これまでになかった観光商品のセット販売などに取り組み、事業を成長させてきました。
しかし、プラットフォームを拡大し、サービスを拡張するためには、個社ごとではなく面で一気に広める必要があります。3年後に3000社のプラットフォームを実現させるためにも、業務提携をしたNTT西日本が持つ自治体ネットワークをうまく活用しながら、地域のサプライヤーや販売チャネルを増やしたいと考えています。
そうして実現させたいのは、シームレスでボーダレスな社会です。交通や観光、体験の予約・購入から利用までの利便性を徹底的に高め、日本でナンバーワンの観光プラットフォームになり、グローバルにも展開していく予定です。
株主の皆様や投資家の皆様には、ぜひご期待いただけますと幸いです。