ベルトラ株主コミュニティ
VELTRA TIMES

コアビジネスの追求と進化への覚悟
ベルトラの新たな成長軌道へ

社長インタビュー 代表取締役 二木 渉
デジタル化の加速によって予約業務などの効率化が進む一方、旅行ニーズは多様化し、グローバル企業の国内市場参入によって旅行業界の競争は激化。不安定な為替の影響で海外旅行のハードルは高くなっています。しかし、この状況を好機と捉えて企業価値を高めていくために、ベルトラはどのような経営戦略、成長戦略を展開するのか。2025年2月に発表した中期経営計画について二木渉社長に聞きました。
社長インタビュー 代表取締役 二木 渉
デジタル化の加速によって予約業務などの効率化が進む一方、旅行ニーズは多様化し、グローバル企業の国内市場参入によって旅行業界の競争は激化。不安定な為替の影響で海外旅行のハードルは高くなっています。しかし、この状況を好機と捉えて企業価値を高めていくために、ベルトラはどのような経営戦略、成長戦略を展開するのか。2025年2月に発表した中期経営計画について二木渉社長に聞きました。

2024年12月期はコロナ禍前との変化が見えた年
コストコントロールの面で課題、通期計画は未達

2024年12月期の営業収益が前年同期比37.8%に伸長した要因は2つあります。1つは旅行需要の回復です。出国日本人数は2019年比で64.8%に回復しました。訪日外客数も2019年比で+15.6%とコロナ禍前を超える客数を記録しています。
そしてもう1つが、オンラインの事前予約が大幅に増えたことです。特に顕著なのは美術館や博物館などの施設で、コロナ禍に実施された入場制限の対策やその後のオーバーツーリズムのコントロールにより、旅行業界のデジタル化が飛躍的に進みました。これが当社のサービスとマッチし、収益拡大につながりました。
ただ、通期計画に対しては未達となり、営業利益はマイナスでの着地となりました。要因は認知の向上を目的とした広告投資と人材投資の実施です。認知度向上への一定の効果を上げることはできましたが、想定していた収益に満たない可能性が出てきた時点で、よりアグレッシブな目標に対してコストコントロールを行い、広告を中断しました。

株主の皆さまへの説明責任を果たし
覚悟をお伝えするための中期経営計画

2025年2月14日に発表させていただいた中期経営計画は、2025年から2027年までの3カ年を対象としています。新たな市場に対応した中長期的な成長戦略を明確にし、STI(短期インセンティブ報酬)設計に対する経営陣の覚悟が伝わるものにするということを使命として、2023年度の後半から経営企画部門、財務部門と議論を始めました。
営業収益84億円、営業利益14億円、営業利益率17%の経営計画を制定。また、ROE20%、3年CAGR25%、グローバル売上比率30%の達成を最重要指標として定めました。あわせて、これらを目指すための経営戦略を策定しています。具体的には「高効率経営の実現」「グローバル観光産業での継続的な成長の実現」「ガバナンス&コーポレート機能強化の実現」です。
株主の皆さまへの説明責任を果たし覚悟をお伝えするための中期経営計画 株主の皆さまへの説明責任を果たし覚悟をお伝えするための中期経営計画

実績検証、コストコントロールなどを
着実に進めて高効率経営を実現する

「高効率経営の実現」に必要な要素は4つあります。まず1つめは実績の検証です。基準は、OTA事業で40%を超える営業利益率を記録した2019年です。当時、なぜこの数字を達成できたのか。当時と比較して何が変わったのか。徹底検証して足りない部分を補い、着地点を見極めます。
2つめはキャッシュ・カウであるOTA事業の利益率向上です。今まではトップラインをつくるために不確定要素にも積極的な投資を行ってきましたが、これからは優秀な人材への投資をはじめ、投下すべきコストをしっかりと見極めて利益を積み上げていきます。
3つめは、商品ラインナップの増加と多様化するニーズへの対応です。2019年の時点で1万2,000件ほどだったツアー商品は、今後の1〜2年で3万件以上へ増加する見込みです。商品ラインナップの増加に加えて、ユーザーエクスペリエンスを改善しコンバージョン率を高めることが必要と考えています。マーケティングとテクノロジーはもともと当社の強みであり、体制も強化していますので、新たなサービスの創出を含めて取り組みます。
そして4つめが情報伝達経路の見直しです。トップダウンの指示と縦割りの業務をなくして目標やノウハウを共有するまでの時間を短縮することも、高効率経営の重要な要素と考えています。

インバウンドとアジア市場を中心に
グローバル市場の売上比率を高める

「グローバル観光産業での継続的な成長の実現」については、LINKTIVITYを含めたグローバル市場での売上比率を、2027年までに現在の17%から30%へ高めることを目標にしています。
目標達成の最大のポイントは成長著しいアジア市場の獲得と考えており、そのために新規事業もスタートに向けて進めています。たとえば、大型客船のクルーズ予約サービスの開始がその一例です。このサービスでは、予約がオンライン上で完結し、クルーズ会社の在庫状況とリアルタイムで連携する仕組みを導入しています。スマートフォンからでも簡単に予約が可能で、日本語、英語を含む6言語に対応したグローバルなサービスとなっています。
インバウンドとアジア市場を中心にグローバル市場の売上比率を高める
インバウンドとアジア市場を中心にグローバル市場の売上比率を高める
目標達成の最大のポイントは成長著しいアジア市場の獲得と考えており、そのために新規事業もスタートに向けて進めています。たとえば、大型客船のクルーズ予約サービスの開始がその一例です。このサービスでは、予約がオンライン上で完結し、クルーズ会社の在庫状況とリアルタイムで連携する仕組みを導入しています。スマートフォンからでも簡単に予約が可能で、日本語、英語を含む6言語に対応したグローバルなサービスとなっています。
クルーズ市場は、若い世代やアジア市場を中心に今後大きな成長が期待されています。特に、2028年に予定されているディズニー・クルーズの日本就航は、業界に大きな変化をもたらすと見込まれています。それまでに、当社はオンラインサービスとして国内最大級の商品ラインナップを整備し、業界のデファクトスタンダードとしての地位を確立したいと考えています。
グローバル市場向けのサービスについてはオンライン化の部分でもまだまだ進化の余地を残しており、当社のビジョンである『心ゆさぶる体験』をお届けできる機会はさらに増えていくと確信しています。

取締役会での戦略議論の質を深め
意思決定におけるスピードを高めていきます

「ガバナンス&コーポレート機能強化の実現」は、プライム市場の上場基準を目安として経営上の課題を解決することを目的としています。重要テーマは、議論不足の解消と意思決定におけるスピード感の向上です。議論不足は、経営サイド、執行サイド双方の役割が曖昧になってきたことに起因していると感じています。M&Aや資金調達をはじめ、全社的な経営戦略については互いに要求しながら議論を深め、確定後速やかに権限を移行する。そこに立ち返ってガバナンスの再構築に取り組みます。
意思決定におけるスピードの向上は、市場の変化に応じた柔軟な判断とセットです。不測の事態に直面したときに計画の遂行を優先するのではなく、そこに潜むリスクを瞬時に分析して計画を変える。それをスムーズに実行できるしくみを取締役会に再構築します。
取締役会の機能的な質の向上は、株主さまへの説明責任を果たし、投資家の皆さまとの建設的な対話を促進するために不可欠です。また、正しい議論と意識決定が可能なしくみをつくることによって適切なIRを実現できると考えていますので、3カ年計画で強化に取り組みます。

ターゲットをマジョリティへ拡大して
多様化した市場にマッチした『心ゆさぶる体験』を提供

OTA事業の成長戦略については、ターゲットユーザーの拡大と、新たなターゲットに向けた旅行サービスの提供に軸足を置いています。その背景にはデジタル化の促進によるFIT(個人旅行)市場の拡大、オンライン予約の普及によるマジョリティ(ライトユーザー)の増加、ニーズの多様化があります。
ターゲットを従来のアーリーアダプター(旅慣れた旅行者)からマジョリティへ拡大すると競争は激しくなります。そのなかで優位に立つためのポイントは、ベルトラのコアビジネスを追求することです。遊園地やテーマパークツアーをはじめ、マジョリティの関心が高い商品も扱いますが、そこで存在感を発揮しようとは思っていません。ベルトラの強みは『心ゆさぶる体験』を提供できること。現地のサプライヤー、ガイドとのつながりを生かした独自のサービスを安心・安全な環境で提供できることです。今、日本人向けガイドツアーのコストコントロールは難しくなっていますが、創意工夫して価格を抑え、質の高いサービスを創出することを何よりも大切にしたいと思っています。
ターゲットをマジョリティへ拡大して多様化した市場にマッチした『心ゆさぶる体験』を提供
ターゲットをマジョリティへ拡大して多様化した市場にマッチした『心ゆさぶる体験』を提供

2025年12月期に必要なのは成果
原点のグローバル市場で進化を目指す

3カ年計画の初年度となる2025年12月期に何よりも求められるのは成果です。誰もが納得できる成果を残して株価を回復させ、未来の観光を創造するためのベースを築く。そんな1年と位置づけています。成長シナリオのポイントになっている『グローバル市場への展開』も、ベルトラにとっては初めての挑戦ではなく、いわば原点回帰です。今期は原点に立ち返りながら進化を目指します。
2025年12月期に必要なのは成果。原点のグローバル市場で進化を目指す

覚悟を持って結果を出し、未来に向けて
期待が持てるサービスと情報をお届けします

長期的な視点と同時に、短期的な成果も出す。それが株主・投資家の皆さまの不安を払拭する唯一の方法と理解しています。そのうえで、未来に向けて期待が持てるサービスと情報をお届けすることをこの場を借りてお約束させていただきます。また、ROEを高めるための投資を継続し、企業価値の向上に努めてまいりますので、皆さまには引き続き力強い支援を賜りますようお願い申し上げます。
自前主義からの脱却
~大手企業からベルトラが選ばれる理由~

現在、旅行業界でトレンドになりつつあるのが『自前主義からの脱却』です。これは、独自の商品やサービスを自社で販売するだけではなく、競合相手とも状況に応じて業務提携や協業を行って、パートナーシップを築く、という流れです。競合相手との連携は以前からありましたが、オンライン化が進む今はユーザーのベネフィットを優先するため、お互いにポジションを変えながら組んだり離れたりしています。

ただ、ベルトラはLINKTIVITYを通じて国内の鉄道事業者や観光施設等と世界中のオンライン旅行事業者をシームレスにつないできましたので、大手企業からはプラットフォーマーとしての役割を期待されることが多いですね。たとえば、東京メトロの『Tokyo City Pass』はその一例です。東京メトロの旅行者向け企画乗車券「Tokyo Subway Ticket」に加え、LINKTIVITYが取り扱う東京の人気観光施設をフリーパスで回れる新商品として開発されました。また、先日リリースさせていただいたクルーズ予約サービスも、ベルトラの「つなぐ力」に期待してお声がけいただきました。

その一方、大手旅行会社とはベルトラの現地ツアー商品の取り扱いに関する交渉がスタートしました。この会社とは旅ナカの体験で長らく競合関係にありましたが、旅行業界全体の活性化につながる提携ができそうです。