ベルトラ株主コミュニティ
VELTRA TIMES

2023年12月期の振り返りと
2024年以降のサステナブルな成長に向けた
中長期戦略

社長インタビュー 代表取締役 二木 渉
2023年5月、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、海外旅行市場の回復により、旅行業界は回復の一途を辿っています。 アフターコロナの時代、ベルトラはコロナ禍で培ったさまざまなソリューションをいかに活かし、どのように拡大していくか。今後の成長戦略について二木社長に聞きました。

主力の海外旅行事業はコロナ禍前以上に改善
LINKTIVITY収益もさらに増加傾向に

コロナ禍前の2019年比における営業収益は引き続き右肩上がりで回復。営業収益は、旅行需要の回復とポートフォリオ全体の成長により前期比166.5%に拡大しました。インバウンドマーケットの回復により、予約プラットフォーム事業「LINKTIVITY」の収益もさらに増加傾向にあります。
2023年5月からの海外旅行市場の回復によって、営業収益全体のうち海外旅行事業の割合が約60%まで回復しました。日本人海外渡航者数は2019年比で年間48%まで回復するも、予約者数の伸び率が予想以上に伸び悩み苦戦しました。しかし、コロナ禍で減少した海外商品の仕入れ強化による利用頻度向上ならびに円安と物価高による単価上昇によって、収益は海外旅行者数の回復以上に改善されました。
営業収益2023 営業収益2023
国内旅行事業は既にコロナ禍を脱しましたが、後半にかけては成長率が鈍化しました。HawaiiActivities事業はリベンジ消費マインドの低下やマウイ火災の影響により売上高は前年割れが続きました。国内旅行事業、HawaiiActivities事業ともに集客強化の施策を推進中です。さらに直近の課題としては国内旅行事業の売り上げの大半が沖縄や離島に集中しているため、2024年度は北海道、本州をはじめさまざまな都道府県への旅行サービスの認知度向上やプロモーション施策を強化して予約数を拡大することを考えています。
また、国内は日本人旅行者だけでなく、円安の影響もあって訪日旅行者が急増しています。これまで約2年以上訪日旅行者のためのサービスを続け積み上げてきたLINKTIVITYは、取扱高において年間で前年同期比9.2倍まで拡大し、予想以上に収益化しました。販売元であるサプライヤーの増加、および販売チャネルの契約社数も堅調に推移しています。

2024年以降は投資と業績目標達成を両立させ
「サバイバルプラン」から「サステナブルな成長」へ

当社の事業は単年度施策での収益のインパクトは比較的効果が弱く、それぞれの事業の積み上げを中長期で実施する必要があります。当社はコロナ禍でも資金調達も含めあらゆるサバイバルプランを実行しながらも、LINKTIVITYにおいては投資を実施し、着実に契約者や販売先を増やしてきました。また、国内旅行についても新たな市場として強化したことによって、海外の旅行市場環境リスクにも対応できたと感じています。2024年以降は海外旅行市場をコアとしつつも、提供する地域やサービス範囲を拡大するための投資と業績目標達成を両立させ、ベルトラ史上最高の更新を実現し、「サステナブルな成長」を目指します。
「サバイバルプラン」から「サステナブルな成長」へ 「サバイバルプラン」から「サステナブルな成長」へ
VELTRA事業では、今期は特に日本人旅行者の+10%程度の認知度向上のための投資を実施し、新規利用者の獲得による裾野の拡大を視野に入れています。ファン=当社サービスを年2回以上利用する顧客と考え、2026年までにオンライン上のみで取引をするOTA事業にてファン100万人の会員組織を目指します。ファン100万人を実現するための会員向け旅行サービスの拡張を行い、コロナ禍前を超えるCAGR (年平均成長率) 45%を目標に据えています。
LINKTIVITYでは中国の大手IT・ネットサービス企業であるTencent Japan合同会社と連携。中国からの訪日旅行者向けのWeChatミニプログラム「旅日」を利用し、中国市場向けプラットフォーム上でのサービスの拡大を推進しています。日本国内のOTAへの販売支援を行い、各サプライヤーの直販サービスやLINKTIVITY内の商品を組み合わせて販売します。企業通貨の連携や、交通の基幹システムなどのサービス開始や移管に大規模な予算が想定されるアプリケーションサービスをクラウド化することで、簡単かつスピーディーに導入実現を支援していきます。

企業間連携をさらに活発化
シナジー効果が生み出した共同企画で
今まで以上に価値の高い商品を提供

ファン100万人達成を目標に、当社とは異なる強みを持つ企業とのパートナーシップを締結します。さらに施設などを提供する企業と連携した商品ラインナップの拡充なども進めていきます。2023年の株式会社JTBとのアクティビティ事業での業務資本提携も含め、当社の持つサービスやシステム基盤を連携強化し、販路の拡大やFIT(個人海外旅行)市場のチャネルを拡大していく考えです。
宿泊付きアクティビティや、テーマ性のあるアクティビティを充実させることによって、今まで以上に顧客満足度が高い商品、かつ、より付加価値の高い商品を開発し、さらなる成長を実現します。これはコロナ禍を経て国内市場に参入し、全体的な商品ラインナップが強化されてきたことで、各社が非常に興味を示していただいたからこそだと思います。
元々当社の成り立ち自体が、ハワイやグアムなどのビーチリゾートに強いところにあり、当社には島に特化したソリューションがあります。当社の会員基盤には日帰りや週末のレジャーではなく、宿泊を伴う距離の離れたエリアでの非日常体験を期待しています。当社の強みを活かしつつ、資本提携によってより価値の高い商品を提供していく考えです。

お客さま一人ひとりに寄り添った「心ゆさぶる体験」を
今後も「人」を大切にサービスを続けていく

当社の海外旅行市場において、旅行中の消費をセグメント別で見ると、観光や体験などのTours & Activitiesは売り上げ全体の73%を占めます。この「体験価値」を旅行市場においてTours & Activitiesだけでなく、さまざまなセグメントで提供していくことが、今後の当社の成長機会になります。
例えば、観光ツアーに含まれているレストラン利用において、上級レストランへの手配オプションやディナークルーズ、ディナーショーといった体験軸の商品強化などの施策を準備しています。大切なのは商品数を増やすことではなく、同じ商品の中でもバリエーションを増やすこと、つまり顧客の選択肢を増やすことです。食・宿泊・移動などその他のセグメントにおいても選択肢が増えれば、お客さま一人ひとりに寄り添った「心ゆさぶる体験」の提供は無限に存在しえます。コロナ禍でサプライヤーが減り人手不足の状態ですが、海外旅行市場の回復が長期化する今だからこそ、Tours & Activitiesを含むその他の旅行消費活動領域においても価値の提供を拡大し、今後も「人」を大切にサービスに注力していきます。
ベルトラ海外旅行市場 セグメント別取扱高規模(FY2019) ベルトラ海外旅行市場 セグメント別取扱高規模(FY2019)

低迷期に培ったソリューションで
これまでにない「心ゆさぶる体験」を拡大する

今期は回復期も含め株主の皆さまには黒字になるのではと期待もあった中、最終着地点のところで期待以上の結果を出せなかったのは残念でした。しかし、コロナ禍の3年間は非常に厳しい環境下にあった一方で、主力の海外旅行だけでなく、国内、訪日など幅広いソリューションに力を入れた3年間でもありました。ここで培ったことで当社は大きく変化したと感じています。今後は株主の皆さまをはじめ旅行者の皆さまにも、当社はこれまでにない新しい価値、「心ゆさぶる体験」をより拡大していく所存です。株主の皆さまには引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
日常にある非日常体験へのヒント
~トライアスロン大会出場を機にランニングを継続した1年~

私個人、この1年間はランニングや自転車、水泳などの運動を始めたため体重が8kg程減りました。きっかけは昨年、友人の猛烈な勧誘でトライアスロン出場の決断をしたためです。泳ぎはもちろんのこと、運動らしきものは過去に一切してこなかったため、この自分の無謀な決断に恐怖すら感じました。そのため日々、地道に練習を重ねてきました結果、昨年夏のトライアスロン本番では何とか完走はできました。52歳にして生まれて初めてのトライアスロン完走は大きな達成でもありました。しかし、達成感もさることながら体力の消耗が著しく、悔しさの残る結果でもありました。

今年は昨年の悔しさを教訓に練習を重ね、目標としてマラソンやトライアスロンなど複数の大会に出場しようと思っています。月間平均200kmを目標に自転車やランニングをしています。怪我のリスクを避けて無理はしないためタイムは速くはないですが、気持ちよく練習を続けられています。

ランニングを頻繁にするようになってから新たな発見もありました。出張先や旅先でも早朝ランニングをしたところ、普段とは全く違った視点で観光地を楽しむことができるようになりました。観光客がまだ活動していない景勝地や観光地は人の賑わいがある景色とはまた違った風景を楽しめ、素晴らしい体験ができます。また、それらの景色を見ながら新しい価値やサービスへのヒントもたくさんあると感じました。こういった私自身の経験も今後の商品開発と、お客さまへの「心ゆさぶる体験」提供につなげていければと考えています。

未来のベルトラを担うリーダーを創出
人的資本経営の取り組みについて

取締役インタビュー 倉上 智晴
これまで営業・人事の責任者を歴任し、長く経営の中核を担ってきた取締役・倉上智晴氏。アフターコロナの中長期的な企業価値向上に向け、2023年から新たに始動した人的資本経営の取り組みについて聞きました。

事業推進の経歴をベースに
人事戦略を立てることが自身のミッション

私は元々システム会社で営業、人事の仕事をしていました。1999年に独立してHRコンサルの会社を立ち上げ、さらに発展性のあるビジネスをしたいと思っていたとき、2001年にアラン株式会社(現:ベルトラ)に出会いました。人事・総務のマネージャーとして招かれて入社し、2004年には、営業責任者としてアクティビティ専門サイト「Alan1.net」を立ち上げました。
2015年に取締役に就任し、その後も事業推進を進めていく中で、2020年HR & General Affairs Division Directorに就任し、人事・総務の責任者に任命されました。同時期、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業のスリム化が全社的な課題になり、海外拠点の閉鎖や多言語サービスのクローズに伴い100名以上の縮小を図りました。さらに30名強の社員が8社へ出向していましたから、その頃の会社は空気が重かったと思います。そのような中、ベルトラの目指す姿、ビジョン・ミッションを掲げるということが非常に大事だと判断し、明確に打ち出していきました。私は最も社歴も長く、当社の創業メンバーとも多くの事業に関わってきた経験があります。そんな私の最大のミッションは、事業推進の経歴をベースに、いかに人事戦略を立て浸透させていくかだと考えています。

全社ビジョン・ミッションの明確化に伴い
HR部門においてもビジョン・ミッションを明確化

2022年に全社のビジョン「人を想い、人に寄り添うことでより良い世界を実現する」、ミッション「心ゆさぶる体験を未来に届ける」を掲げ、2023年からようやく人的投資ができるようになりました。ビジョン・ミッションの浸透のために、まずは年始のキックオフや日々の朝礼の場などで、社長の言葉、私の言葉、あるいはメンバー間の言葉で発信するようにしております。
HR部門においても組織のあるべき姿と現状の組織課題を明確化しました。我々は何者なのか、今後社員がどのような姿になってほしいのかを明らかにし、ビジョン「企業理念・組織文化を明確にし、実現することで多様性のあるメンバーが活躍できる会社となる」を掲げました。そしてお客さまに「心ゆさぶる体験」を届けるにはまず社員がワクワクするような心ゆさぶる環境で働く必要があるという原点に立ち戻り、ミッション「人が成長し、働きたくなる、ワクワクするような心ゆさぶる環境を届ける」をモットーにしたのです。
全社ビジョン・ミッションの明確化に伴いHR部門においてもビジョン・ミッションを明確化
これを実現していくために、組織構造の変革、あるべき人材像の定義、Leadership Competency(ベルトラの組織および人材が、パフォーマンスを発揮し、価値を実現するためのHowを定義化したもの)の浸透・深化を進めます。さらにその取り組みの成果を測定するための人的資本関連KPIのターゲットを設定。社内サーベイで現場の声も聞きながら達成状況を可視化し、随時モニタリングとゴール達成のための施策を推進しております。
これを実現していくために、組織構造の変革、あるべき人材像の定義、Leadership Competency(ベルトラの組織および人材が、パフォーマンスを発揮し、価値を実現するためのHowを定義化したもの)の浸透・深化を進めます。さらにその取り組みの成果を測定するための人的資本関連KPIのターゲットを設定。社内サーベイで現場の声も聞きながら達成状況を可視化し、随時モニタリングとゴール達成のための施策を推進しております。
全社ビジョン・ミッションの明確化に伴いHR部門においてもビジョン・ミッションを明確化

若手や経験者採用の社員の活躍を促進させる人的資本経営とは、
具体的取り組みについて

組織戦略としては、従来のピラミッド型組織そのものを2023年からは根本的に変えることを強く打ち出しました。組織内における豊かな体験創出のための知見共有や、コラボレーションを生み出すための組織形態として、複数のレポートラインやプロジェクトでの取り組みを重視する、フラットなマトリックス型組織への移行を推進しています。
レポートラインとプロジェクトで異なるリーダーを据え、プロジェクトではあえて新入社員や社歴の浅い社員を抜擢しています。レポートラインだけでなく、プロジェクトの中でも多様性をもって活躍できるような仕組みです。また、全社戦略の浸透および意思決定スピードの促進を目的とし、フラット組織をベースとすることで経営陣との直接的な連携が多くもてる組織体系へと移行し機動性も高めております。
若手や経験者採用の社員の活躍を促進させる人的資本経営とは
現在は7つの全社プロジェクトが立ち上がり、実際に頭角を現している社員が多く出てきています。このような変革に伴い、採用や人事評価の基準も改めました。2024年に全社においてさらに組織横断のプロジェクトを推進しています。
今後の大きな課題としては、コロナ禍でのマイナスマインドから投資し成長するプラスマインドになること、挑戦する風土の強化、根強く残る部門別縦割り文化からの脱却、リーダー育成の強化、中期戦略の組織全体への浸透などがあります。

時代に合わせ、瞬時に変革・発展するのがベルトラ
今後も人的資本経営を推進していく

2023年はHR部門において人的資本をベースとしたKPIの設定および数値化を実施し、「働きがい」「健康経営」「女性活躍」「エンゲージメント」などを一部開示するとともに、改善に向けた取り組みを始動してきました。結果としてオープンワーク社が出す「2023年働きやすさランキング」には名だたる企業の中で上位にランクインするなど社外からも評価をいただいています。
今後は中期経営計画から中期人事戦略を構築し、人的資本開示戦略を策定。さらに中期経営計画実現に向けた人的資本指標の明確開示を考えています。具体的には「女性管理職」「離職率」「教育費用」などを開示検討中です。2024年は特にエンゲージメントのさらなる向上と、組織活性化によるパフォーマンス最大化に取り組んでまいります。
さまざまな変革によって現場には柔軟に対応し取捨選択する力がより一層求められ、中には振り回されていると感じる社員もいることでしょう。しかし、コロナ禍を経て我々が痛感したのは現状維持がいかに危険かということです。当社はこれまで時代に合わせ瞬時に変革したことで危機を乗り越えてきました。いま最も大切なのは、才能ある新しいリーダーがどれだけ表に出て活躍できるかであり、組織にとって本当の成長がここにあります。これは私たち役員陣の今後の取り組みにかかっていると考えております。今後も組織のさらなる発展に向け、ベルトラにとって最適な経営戦略を追求していく所存です。

倉上 智晴
Tomoharu Kurakami

ベルトラ株式会社 取締役
倉上 智晴 Tomoharu Kurakami ベルトラ株式会社 取締役
2001年アラン株式会社(現:ベルトラ)入社。人事・総務マネージャーを経て、2004年には営業責任者としてアクティビティ専門サイト「Alan1.net(現:VELTRA)」の立ち上げに従事。2015年より取締役。2020年にHR & General Affairs Division Directorに就任し、人事・総務部門を統括。
倉上 智晴 Tomoharu Kurakami ベルトラ株式会社 取締役