ベルトラ株主コミュニティ
VELTRA TIMES

2022年12月期 第2四半期の業績回復と
インバウンド需要の本格的な回復に向けた成長戦略
社長インタビュー 代表取締役 二木 渉

社内体制の強化、観光業界のDX化をはじめ、インバウンド需要の本格的な回復を見据えて取り組んだ施策の成果と決意を二木渉社長に聞きました。

国内向け商品ラインナップの大幅な拡充と
「Hawaii Activities」の利用者急増で業績が回復

2022年4月から6月の日本人の出国者数は月平均で約10万人。コロナ禍以前との比較では回復率は10%未満と、依然として厳しい状況が続いていますが、観光目的の旅行者全てが日本から出られなかったことを思えばとても大きな前進です。
国内旅行についてはコロナ禍前と同じ水準まで動きが戻ってきており、ベルトラの営業収益も2022年7月は28カ月ぶりに1億円を突破。8月も1億円超えは確実だと思われます。

業績回復の要因は2つあります。1つは国内向けの商品ラインナップを拡充し現在5,700商品と、2019年のコロナ前と比較して約2倍の商品が提供されており、このような取り組みが功を奏して売上が続伸しました。2つめはグループ会社が米国で運営するハワイ専門の現地体験ツアー予約サイト「Hawaii Activities」の利用者の急増です。ワクチン接種が始まった2021年から回復傾向にありましたが、新たなプロモーション施策、同業他社の撤退、そして米国の旅行需要回復に後押しされる形でリピーターはもちろん新規顧客がさらに増えています。

Hawaii Activities はこちら

生活様式の変化によって交通・観光のDX化が加速
プラットフォーム事業が予想以上のスピードで成長中

商品ラインナップの拡充、新たなオンラインサービスの創出、顧客エンゲージメントの強化。コロナ禍でおこなったさまざまな取り組みのなかで、もう一つの収穫はプラットフォーム事業(リンクティビティ)です。これは主に鉄道や運輸、公共施設等でのインバウンド向けのDXサービスですが、新型コロナにより事業者側の意識が大きく変わったことが成長を牽引しています。コロナ禍以前は外部サービスとの連携や新たなシステム導入といったDX化の推進に躊躇する事業者も多く、サービス拡大には時間を要すると思われましたが、新型コロナによってマインドが変化しました。在宅でのテレワーク増加、地方移住などによる交通機関の利用者数の減少に伴い、新たなビジネス展開におけるDX化が各社で推進され、リンクティビティのようなサービスが必要とされています。この動きは他の公共交通機関や観光施設、宿泊施設へも波及しており、プラットフォーム事業の契約事業社数はこの2年で5~6倍に増え、コロナ禍ではむしろ営業人員を増員し体制を強化しました。現在も成長を続けているこのビジネスの真価が問われるのはこれからです。インバウンド需要の完全回復時、多くの旅行者にサービスを利用していただけるのを楽しみにしています。

リンクティビティはこちら

国内への人員投入を機に機動力のある組織へ
観光業界のDX化推進により生産性も大幅に向上

収益回復をめざす過程で社内体制も大きく変わりました。コロナ禍以前は社員の得意分野を考慮し、事業部ごとに各組織を細分化して専任のチームを作っていましたが、変化の激しい外部環境の実態に合わせ、必要なサービス開発に集中的にリソースを投入する機動性の高い組織になっています。
きっかけは、国内市場を開拓するために海外旅行部門から多くの社員を異動させたことです。国内旅行と海外旅行では求められる知見や経験も異なるため、対応するのは決して簡単ではありません。しかし彼らは変化に躊躇せず、国内旅行の仕事に集中して取り組んでくれています。さらに海外在住の社員も国内事業に関わるなど、オンラインミーティング等の普及によって地理的な問題も大きな課題では無くなりました。
観光業界のDX化が進んだことで、生産性も大幅に向上しました。あらゆる地域に直接訪問し、新たな魅力を発掘するのが我々のビジネスの源泉でもあるだけに、現地への出張は重要です。しかしそれ以降の企画や提案、進捗状況の確認、契約の交渉・締結、販売に至るまでオンラインで完結できるようになったのは、業務の効率化という面で本当に大きな変化であり、ビジネスチャンスも増えたと感じています。

心ゆさぶる体験で紡ぐストーリー性を重視して
離島を軸にサステナブルな観光開発に取り組む

これから先ベルトラが取り組むテーマに「持続可能な観光開発」があります。国内では国立公園を軸にしたエコツーリズム、アドベンチャーツーリズムのラインナップ拡充がそのひとつです。特に注目しているのは離島です。日本の島嶼は有人の島だけでも400以上あり、奄美諸島、壱岐島、五島列島、慶良間諸島、屋久島、伊豆諸島など、多くの離島が国立公園に指定されています。そこで自然環境の美しさや大切さを感じられる体験を提供したいと考えています。

辺境地での観光開発は私達の得意分野で、離島と近隣の観光地、あるいは地方の主要都市から日帰りで往復できる観光地をつなぐソリューションを構築します。海外でいえば「パリからモン・サン・ミシェル」「ワイキキからハレイワ」のようなイメージです。日本での観光旅行は主要観光都市のみまたは宿泊施設がベースになることが多いですが、隣接する都市を横断したストーリーを構成し、緻密なマーケティングをおこない、離島や観光地を起点にしたつながり、広がりをつくっていきたいと考えています。

いずれにしても、大切にしたいのはストーリー性です。海外のアクティビティは比較的終日(1日)を要するものが多いですが、日本の観光は半日で、体験と食事のサービスが分離されていることが多いです。地方の観光地でアクティビティを楽しんでも周辺には飲食店が無く、結局はコンビニまたはチェーン店を利用するなどのケースも珍しくありません。せっかく見知らぬ土地に来たのであれば地産地消品での食文化を体験したいですよね。今後の取り組みとして、断片的でなく五感全てが満喫できるような体験・サービスを提供していきたいと考えています。またインバウンド需要が戻った際、外国人観光客の期待を超える魅力的な体験を提供するためには、このような体験の連続性やストーリー性がより重要になると考えています。

日本の離島はこちら

インバウンド需要の本格的回復はベルトラのさらなる成長につながります

ベルトラの収益の柱が海外旅行のOTA(オンライン・トラベル・エージェント)事業であることは今後も変わりません。私たちはこれからも世界を横断して『心ゆさぶる体験』を提供してまいります。その一方、コロナ禍のさまざまな取り組みのなかで再発見した国内旅行の魅力を、外国人観光客の皆さまにもわかりやすく発信していきます。
現状では1日の入国者数、入国対象国とも制限されており、どの観光地もインバウンド需要を期待どおりには取り込めていません。しかし需要が完全に回復した際には、ベルトラが創造した新たな価値をお見せできると思いますので、株主の皆さまには引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。

持続可能な未来のため、経営者としてやるべきこと
~回復を機に「環境」という新たなステークホルダーへの価値提供~

私は日課で毎朝、愛犬と1時間ほど散歩しています。都心から離れた郊外に住んでおり、森林や公園も沢山ありとても美しい町ですが、そんな町でもやはり道端にはゴミが落ちていて、犬の散歩と一緒に毎日ゴミを拾っています。拾ってもゴミはまた捨てられ、また拾ってのイタチごっこです。さらに人気の無い場所や郊外にでるとゴミは沢山捨てられています。私は釣りが趣味ですが、その河口や海岸にあるゴミは凄まじく、トラックが何台あっても足りないほどです。なぜこんなにモラルが無い人がいるのだろうと思う一方、自分も昔はそのモラルがない側の人間だったのかもしれません。

しかし、コロナ禍の緊急事態宣言により人の動きが止まってからはゴミは激減しました。ハワイでは観光客が少なくなったことで、街や海がとても美しくなったとニュースでも報道されました。観光産業に携わる側としては非常に複雑な心境です。観光の発展とゴミ問題や環境破壊などはやはり相関関係があります。観光地に住む全ての人が旅行者を歓迎しているわけではありません。

ウィズコロナ・アフターコロナに向けて、ただ元に戻るのではなく、これを機会に持続可能な環境保全のための活動も推進したいと考えています。今まで旅行者・社員・取引先事業者、そして株主の皆さまというステークホルダーへの価値向上に努めてきましたが、さらに「環境やそこに暮らす人達」という新たなステークホルダーにも配慮し、環境にも無理のない持続的な成長戦略を模索し、推進していきます。

しなやかに、柔軟に。
社員の気持ちに寄り添いながら、
誰もが活躍できる環境をつくっていく。

取締役 COOインタビュー 萬年良子

取締役COOの萬年良子氏が目指すのは、年齢、性別に関係なく全ての社員が活躍できる環境の実現。2016年の入社以降、牽引してきた社内改革や人材の育成、そして今後のビジネスの取り組みについて聞きました。

外資系企業で学んだことを活かし
ベルトラで最高の職場環境をつくりたい

ベルトラ入社前、私はアメリカン・エキスプレスに30年弱在籍し、オーストラリア赴任を含めて、世界中の海外トップリーダーと仕事をしてきました。日本と海外の企業文化や、仕事に対する価値観の違いを理解し、何よりも優れたリーダーから多くのことを学びました。だから今は恩返しの時です。
2006年から4年間在籍したシドニーアメックスでは、人事部門の社員も現場の業務を経験し、マネジメントの手法を学んでいました。現場を知ることがより良い人事施策をするための第一歩という考え方なのです。日本ではあまり聞いたことがない新鮮で先進的な考え方でしたので驚きましたが、「社員に寄り添う」ことは最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整備することなのだと感じました。これは「社員を甘やかす」のではなく、本質的な仕事をしてもらい、最高の結果を出すために、社員目線で課題を解決するための「寄り添う」です。日本の企業もそのように変革するべきだと感じました。

ベルトラに入社するきっかけは二木社長から「カスタマーサービス部門(以下:CS)を助けてほしい」と声をかけていただいたことです。
旅行業界のCSは時差や現地とのやりとりで平常時もハードワークになりがちです。当時のベルトラは、いわば第二創成期。二木さんの社長就任と本社移転から日が浅く、キャリアパスや働き方に関する制度がまだ固まっていない状態でしたので、このままでは繁忙期の夏の旅行シーズンを前に離脱する人が出てくるかもしれないと危惧されていました。実際に会社を訪問した際、若い社員が多くエネルギッシュな空気に圧倒されたことを覚えています。なんとかこの会社に、私が海外で吸収したことを還元できればと思い、入社を決意しました。

入社後まず1カ月間かけてCS部門全てのスタッフから仕事内容や就業時間、職場の状況等についてヒアリングをおこないキャリアパス制度の構築、残業時間の短縮、生産性の向上をはじめ、33本の施策を社長に提出しました。驚いたのは、「萬年さん、全部やってください」と即答されたことです。「人事部門が軸になる施策が多いから、CSの課題を解決したあとは人事部門の責任者として改革を進めてください」と言っていただき、なんとしても期待に応えなければと思いました。

CSスタッフのために確立した在宅勤務制度を
他部門へも展開して働きがいのある環境を構築

最初に取り組んだのは、CSスタッフの評価方法の修正です。もっと主体性が伸びるような評価方法にアップデートし、ヒアリングの内容を基に細かな規則も変えていきました。傍から見ると些細な変化の積み重ねかもしれませんが、業務効率を高めるために、業務以外のことでエネルギーを使わなくても良い環境を整備することは重要だと思います。
Work From Home(在宅勤務)の導入も、CSのスタッフが最初。家族の転勤により退職を希望されたのですが、CSには不可欠な存在でしたので、全力で引き留めました。そして本意を確かめたところ「ベルトラで仕事を続けたい」ということもあり、人事で早急に制度を創り、役員会で承認を得ました。1年も経たずに施策の結果は実を結び、離脱者や残業は激減、繁忙期には営業社員がサポートしていたCSは強く生まれ変わりました。社員の力が結束された結果です。

意識していたのは、自由と自己責任の改革をしなやかに進めていくこと。敵をつくらず、争わず、社員に寄り添いながらスマートに働きがいのある環境を整えていくことです。
Work From Homeは他の部門でも導入され、人事制度の整備を軸とする33本の施策は次々に実現していきました。産休・育休制度もこのときに充実をはかり、今では復職率ほぼ100%の制度として定着しています。

具現化した数々の施策のなかでも、キャリアパス制度の導入は特に肝いりの施策です。それによって、CSからテクノロジーや営業、人事など、さまざまな部門への異動が可能になり、活躍してマネージャーとしての資質を開花させる人も続々と出てきました。活躍できる人が増えると、それは会社に還ってきます。「個を活かす」働きやすい環境の整備を通じて成果を出し、この会社を成長させ続ける。それが私の果たすべきつとめだと思っています。

人財・女性活躍推進への取り組み

特に女性リーダーの活躍を支えるため、多様性ある人財がやりがいを持って働くことができる職場環境を整備

  • 2018年テレワーク制度「Work from Home」部分導入
  • 2020年スムーズな完全テレワーク化を実現
  • 2021年独自ワーケーション制度「Work from Anywhere」導入
Work from Anywhere

社員それぞれの状況に合わせ、世界中どこからでも
最適な場所を選んで業務を行える制度
ワークライフバランス向上と生産性の高いアウトプットができる働き方を目指す

ソートリーダーシップの向上に取り組み
サステナブルなツーリズムを牽引します

これからの日本は個人の時代。自身の存在価値を知るため、自分が正しいと思うことを貫くために勇気を持って行動する若者も少しずつ増えていくと思います。外から見た日本は、アウトプット力が不足していて、リスクを取らない国です。だから本質を見きわめるために立ち上がろうとする若者が育っているとも言えますね。

彼らの存在は今はまだ少数でも、やがて多くの企業に影響を及ぼすことを期待します。たとえば今、企業のテーマのひとつにSDGsがありますが、利益を度外視してやりたいことに取り組む若者が増えれば、周囲の様子をうかがいながら小手先で取り組んでいるような企業は見向きもされなくなる。それは、大企業でも中小規模の会社でも同じでしょう。

そんな社会で私たちがサステナブルなツーリズムを牽引するためには、ソートリーダーシップ(※)の向上が不可欠です。ベルトラが求めるソートリーダーシップとは、社会課題を捉え、関わるステークホルダーが共に成功でき、斬新でイノベーティブなソリューションの創出。そのために、誰に何を届けたいのか?それをすると何が良いのか?本質を貫き、中長期的な視点で戦略的なビジネスモデルを検討することです。考えて主体的に行動できる次世代のリーダーを育てるためにも、とりわけ、マネージャー職以上の人材には今まで以上に期待を込めて、高いこころざしと広い視野を求めていきます。

ソートリーダーシップを育成するためのポイントは、目的と意義を明確にすることだと思います。たとえば新規ビジネスを立ち上げたとき、マネージャーには必ず「ここであなたがやりたいこと、やるべきことは?」と問いかけます。そしてこの新たな取り組みは、お客さまにとって、その業界にとってどんなメリットがあるのか、というところまで掘り下げて話をします。なぜなら社会的な価値を追求できない企業に未来はないからです。そういう話ができるのは現場と経営陣の距離が近いベルトラならではです。現在は直属のディレクターがその都度、現場とコミュニケーションをとっていますが、その距離感を保ったまま教育プログラムとして確立することも、ベルトラならできるのはないかと思っています。

(※)ソートリーダーシップ(Thought Leadership)・・・・・特定の分野(業界・テーマ・社会問題)において、将来を先取りした革新的なアイデアや解決策をいち早く発見し、示すことでその分野における行動をとること。

一人ひとりの社員と寄り添いながら
旅行業界で新たな価値を創出します

「人を想い、人に寄り添うことでよりよい世界を実現する」。このビジョンに基づき、私たちは主体的に行動できる人、社会と関わり良い方向へ変えていきたいという人を積極的に求めていきます。そして、一人ひとりの社員と寄り添いながら、責任を持って仕事に取り組める人、結果を追求できる人材を育成することでベルトラの企業価値を高めていきたいと考えています。

どれだけテクノロジーが進歩しても、何をすべきかを決めるのは人。そして世の中を変えるのは、学歴やキャリアではなく強い意志と行動力です。私たちはこれからも、旅行業界で新たな価値を創り出していきます。
株主の皆さまには引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。

萬年良子 Ryoko Mannen
ベルトラ株式会社 取締役 COO
製薬会社、外資系生保を経て1989年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド入社。信用管理部やCS部門の責任者を歴任し、2012年よりアメリカン・エキスプレス・ジャパン副社長兼日本GMを務めた。2016年にベルトラに入社。2017年から2019年まで取締役としてカスタマーサービス、人事、広報、海外旅行事業部門を歴任。GPTW(働きがいのある職場)、顧客満足度指数NPS(Net Promoter Score)などの導入を進めた。2020年より最高執行責任者として海外・国内営業とCS部門を統括。現在はSDGs実装を可能にする組織運営とリーダー育成に取り組んでいる。