2021年12月期 第2四半期の振り返りと
アフターコロナを見据えた事業展開
社長インタビュー 代表取締役 二木渉
コロナ禍で人の移動が抑制され、依然旅行業界は大きなダメージを受けています。そのなかで原点回帰し、新たな一歩を踏み出したベルトラ。アフターコロナ時代に圧倒的な存在感を放つために何を始め、どこを目指していくのか、二木渉社長に聞きました。
米国でのワクチン接種の進行により「HawaiiActivities」の利用者が急増。
国内では優秀な人材を投入して新事業の立ち上げと体制強化に注力した。
コロナ禍で引き続き回復の見通しが立たない状況のなか、当社独自の予測値にもとづいて日本人海外渡航者数の変化のシナリオを作成し、2022年の回復を想定して経営体制の強化を進めてきました。そのなかで希望が見えてきたのが北米市場です。ワクチン接種の進行が要因と思われますが、旅行者の動きが活発になっており、当社のグループ会社が米国で運営するハワイ専門の現地体験ツアー予約サイト「HawaiiActivities」の利用者が急増しています。2021年3月以降のアクティビティ予約者数は、新型コロナ感染拡大以前の2019年を大きく上回っており、第2四半期(4月~6月)の平均回復率は200%に達しました。激戦区のハワイにおいてこの数字を記録しているのは、おそらく「HawaiiActivities」だけでしょう。
「HawaiiActivities」の一番の強みは、現地サプライヤーとのリレーションシップを何よりも大切にして、心揺さぶるコンテンツの開発からプロモーション、予約販売まで一貫して実行できるエキスパートが揃っていること。だからこそ今、旅行者が急増している状況でツアーを運営する旅行会社から頼りにされるのでしょう。またそれが、競合他社が撤退を余儀なくされたコロナ禍で踏みとどまることができた理由でもあると思っています。
海外市場の一時的な消失が国内の体制強化の契機に
一方の国内市場は、2021年6月時点の延べ旅行者数は、前年比で24%増。緊急事態宣言の発出が続いており、積極的に旅行を楽しめる状況ではないものの、ツアー会社や宿泊施設による感染対策の徹底等によって移動や宿泊への抵抗がなくなりつつあり、昨年の同時期とはかなり状況が違います。
そのなかで私たちは国内に軸足を置き、新事業の立ち上げと体制強化に注力してきました。これらの事業をスピード感をもってスタートできた要因のひとつは良くも悪くも新型コロナです。海外のマーケットが一時的に消失した状況になったからこそ、優秀な人材を国内に投入することができたと言えるでしょう。
キャッシュフローが改善し、筋肉質な経営体制を維持
財務状況については、米国ハワイのグループ会社「HawaiiActivities」の業績回復と予約数の増加による前受け金の増加によってフリーCFが改善。財務CFについては、2021年1月に株式会社オープンドアを引き受け先とした第三者割当増資によって手元資金の流動性が向上しました。また、引き続き戦略的にコストコントロールを行い、収益を確保しやすい筋肉質な経営体制を維持していきます。
従来の領域に留まらないOTA事業と新たに立ち上げた観光IT事業、
この2つを軸に企業価値の最大化を目指す。
新型コロナの感染拡大以前はOTA(オンライン・トラベル・エージェント)事業に経営資源の大半を投入してきました。その未来はけっしてネガティブではありません。競争優位性の源泉となりうる資産を活用し、新しいサービスを提供できるのが私たちの強みです。現在は、従来の領域に留まらないOTA事業と新たに立ち上げた観光IT事業の2軸で企業価値の最大化を目指しています。
OTA事業については、需要回復が見られる市場に対する販売力と、旅行前・旅行後の価値を拡大できるサービスの強化がテーマ。そのなかで、厳選された日本と世界各地のすてきな旅の案内人が心揺さぶる旅の体験をオンラインでお届けする「ベルトラ・オンライン・アカデミー」。そして、日本にいながら世界の食文化を体験できる「世界のGOHAN@home」がスタートしました。いずれもコロナ禍だからこそ生まれたサービスで、特に食をテーマにした体験の提供は、当社にとって未踏の領域だった食文化と向き合う転機となりました。もちろんこれはスタートに過ぎません。食は旅のなかでも重要な要素であり、地域の美味しい食事を楽しむことは、文化を体験することにほかなりません。アフターコロナを見据えて、さらに食との関わりを増やしていきたいですね。
ニューノーマル時代の体験提供と情報発信
観光IT事業はインバウンド向けメディア事業、観光産業支援型クラウドファンディング、プラットフォーム事業の3つで構築しています。
インバウンドメディア事業は「ニューノーマル時代の体験提供と情報発信」がテーマです。2021年3月に和食を通じて世界規模の文化交流を促進するための英語情報サイト「Umami Recipe」を、4月には宿泊を伴う旅行にとどまらず、週末や余暇を使った体験を発信する情報メディア「YOKKA(よっか)」を開設しました。
アフターコロナで存在感を発揮するクラウドファンディング
観光産業支援型クラウドファンディングは、「Zenes(ゼネス)」として2021年5月にスタートしました。現在は新型コロナで大きなダメージを受けて困窮している観光地・旅行事業者を支援するプロジェクトを中心とし、すでに日本全国、世界各国からプロジェクトの成功報告が届いています。次のステップはアフターコロナです。人の流れが変わり、これまでのような大量輸送・送客の集客モデルは難しくなるかもしれません。そのなかで新たな体験サービスをこのクラウドファンディングでテストマーケティングし、旅行者に積極的にリーチできるサービスとして存在感を発揮していきたいと考えています。
Zenes(ゼネス)はこちら
国内向けも販売開始、インバウンド需要の回復で劇的な成長が期待できる
日本の公共交通機関や公共施設などの電子チケットを提供するプラットフォーム事業(「リンクティビティ」で展開)では、販売チャネル・商品ラインナップの強化を進めています。観光業界は依然として厳しい状況にありますが、観光庁が2030年の訪日外国人旅行者数6000万人、旅行消費額15兆円等の目標達成に向けた取り組みの継続を明言していることもあり、インバウンド需要が戻ってきた際には目の前の景色ががらりと変わる、そう信じて取り組んでいます。また、訪日旅行者の回復を待つだけでなく、日本国内の需要の先行回復に現在は国内向けの販売も強化しています。
海外市場の本格的な回復は2022年以降を想定。
国内市場は2021年11月下旬以降の段階的な回復を期待。
独自の回復予測に沿って積極的に攻める
海外旅行の回復は未だ見通しが立たない状態にあります。特にアジアは厳しく、国境を越える移動の制限が緩和され本格的な回復が始まるのは2022年以降と想定しています。国内においても感染拡大に歯止めがかからない状態が続いていますが、ワクチン接種率の上昇に合わせて段階的に回復すると見ています。現在(2021年8月末)、首都圏に発出されている緊急事態宣言の解除予定月が9月であることから、11月下旬あたりから徐々に国内旅行の市場は活性化してくるのではないかと考えています。いずれもSARSの事例をもとにした当社独自の回復予測ですが、厳しい状況のなかで事業ポートフォリオを再構築し、経営基盤の強化に努めてきましたので、そこに向けて積極的に攻めていくつもりです。
AFTER TALK
原点回帰 ~新型コロナがもたらした変化~
コロナ・ショックに直面し、事業やサービスに対する考えはどう変わったのか、
二木社長に率直な想いと会社の雰囲気について話していただきました。
今、株主の皆さま、投資家の方々に「新型コロナによるポジティブな影響は?」と聞かれたら、私は「原点回帰できたことです」とお答えします。設立以来、20年近くにわたって継続してきた2ケタ成長がストップし、今後の経営計画の見直しを強いられたことで、私たちは「旅とは何か」「これからの時代に求められることは何か」と立ち止まって考えることができました。また、ここまではオプショナルツアーという一つの事業に特化し、拡大し、成長を揺るぎないものと信じてきました。しかし、人が移動できない社会では、今の当社では価値を提供できないということを思い知ったのです。でも、ベルトラはそこで前を向きました。会社を存続させ、さらなる進化を遂げるため、旅行者のために、移動ができなくでも提供できる価値を追求しよう。それが私たちが導き出した答えでした。旅行者に心揺さぶる体験を提供できるコンテンツは、いくらでも創出できる。そして旅行ができるようになったときには、その相乗効果で今まで以上に価値を作り出せる。そんな自信に満ちあふれています。
社員が語る「世界のGOHAN@home」制作秘話
2021年3月にスタートした「世界のGOHAN@home」。旅行会社が手掛ける宅食サービスとして、多くのメディアでも取り上げられています。プロジェクトを統括する黒木泉部長に制作秘話を聞きました。
ベルトラが提案する、新たな食のサービス
コロナ禍の旅行業界ですが、飲食業界も同様。元来イベントなどで利用していたレストランや、スタッフ行きつけのレストランなど、厳しい状況にある飲食業界と一緒に何か出来ないか、という想いがありました。
またベルトラの会員215万人のうち、9割以上が海外個人旅行でご利用いただいていたお客様です。旅行頻度も通常より多く、旅行に行けないストレスを感じているであろうことは容易に想像できました。
そこでまず東京・新橋のオーストラリア料理レストラン『64 Barrack st.』とオンラインアカデミーを開始。事前に食事を配送し、シェフがオーストラリアについてオンラインにて解説する体験は好評でしたが、「料理だけでも配送してほしい」というリクエストも多数あった事から、宅食サービスを試験的に開始しました。
旅に出た際には五感をフルに活用します。目で見て、耳で聞いて楽しむ「オンラインアカデミー」。そして「世界のGOHAN@home」では、味覚と嗅覚を通じた旅行体験が味わえます。例えば『ロータスパレス 赤坂』のベトナム料理が届き調理する際、部屋に立ちこめる香辛料やハーブの香りは、一瞬でベトナムの風景を思い起させるのではないでしょうか。 外地の空港や駅に降り立ち、全く知らない街を歩く時の高揚感やドキドキ感。食事とオンラインアカデミーを組み合わることで五感のうち4つを刺激し、旅の感情を追体験していただけると考え、現在27カ国、65レストランの本格料理を厳選してご提供しています。
飲食業界と共に、食の体験を通じてお客様に喜びを
オンライン旅行会社ですので、飲食業界とのお付き合いはほとんど無く、初めての経験の連続でした。このような大変な時だからこそ、食の体験を通じてお客様に喜んでいただきたい。困難な状況を一緒に乗り越え、応援したい。レストランには実際に何度も足を運び、忙しいシェフの方々に我々の想いをお伝えしました。
お陰様で予約が取れないような人気レストランにも賛同をいただき、ミシュラン2つ星のフランス料理『Restaurant L'allium』など、これまで宅食サービスを全く行っていなかったレストランとも契約にこぎつけることが出来ました。お店で提供される料理と相違ない高品質の味であることを十分確かめたうえで、商品開発から販売まで、ベルトラが全面的にサポートしています。
「旅マエ・旅ナカ・旅アト」という旅行体験
世界から旅が止まってしまった今、旅の素晴らしさや、旅から得られるさまざまな想いを呼び起こし、またいつか旅行に出たい、というモチベーションに繋がるサービスを創りたいという想いがありました。 オンラインツアーで今まで知らなかった国について知ってもらい、世界のGOHANで料理を楽しみ、次の旅行先への想いを巡らせる。例えば、ピラミッドを見るオンラインツアーに親子で参加されてエジプトの国民食「コシャリ」に興味を持ち、後日日本で唯一の専門店『コシャリ屋コーピー』を注文いただき、夏休みに一緒に料理をしたというお客様がいらっしゃいました。このサービスを通じてお子様が海外に興味を持つきっかけとなり、将来エジプトに実際に足を運んでくれれば、これほど嬉しいことはありません。
ベルトラでは取引先企業やガイドさんのことをパートナーと呼んでいます。旅行者の皆様に素晴らしい現地体験を提供いただくには、無くてはならない対等な関係であるべきという考えからです。レストランも同様で、一度契約したからには商品の企画、販売をきっちりとサポートさせていただく。そこが大手通販サイトやプラットフォームとは違うところだと思います。
シェフやお店には素晴らしい料理を作ることに集中していただき、ベルトラは包装や配送過程、また同封される調理説明書にも細心の注意を払い、徹底的にサポートする。パートナーを応援し、共に成長したいと願うベルトラの企業文化が顕れています。
またコロナが落ち着いたらレストランに実際に足を運んでほしいという想いから、販売ページにはお店の情報や行き方などを掲載しています。旅行に行く前に、その国の料理を食べてもらいながら計画をする。また旅行後、レストランで食事をしながら旅の思い出を振り返る。「旅マエ・旅ナカ・旅アト」という総合的な旅行体験と、新たなカスタマージャーニーの一旦を担うサービスにしたいと考えています。
VELTRA TIMESをお読みいただいた方に、世界各国の本格的な料理が簡単な調理で味わうことが出来る「世界のGOHAN@home」の特別割引クーポンをご用意いたしました。是非この機会にお試しください。
クーポンの取得はこちら
※1 クーポンご利用には会員登録が必要となります。
※2 先着20予約限定となります。
※3 ご予約期間は2021/09/01~2021/10/31、対象となる参加日は2021/10/01~2021/12/31です。
※4 その他ご利用にあたっての注意事項はクーポン取得ページをご確認ください。