新型コロナの直撃を受けた2020年の振り返りと
アフターコロナを見据えたビジョンについて
社長インタビュー 代表取締役 二木渉
2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外出自粛によって多大なダメージを受けた旅行業界。海外市場の回復時期が読めない中、ベルトラはどんな想いで前を向いたのか。アフターコロナを見据えて今、どんなことに取り組んでいるのか。二木渉社長に聞きました。
コロナをきっかけにベルトラが今できることは何かを考え、
ベルトラ・オンライン・アカデミーの可能性を実感した2020年。
ーー2020年12月期の取り組みについて教えてください。
ベルトラはこれまで、旅中という領域で商品の世界展開と旅行者の世界展開という2つの面からグローバルに事業を展開してきました。ところが2020年は新型コロナの感染拡大によって世界中の国々が入国制限措置を取り、春を迎えても市場回復の見通しはまったく立ちませんでした。このときはさすがに「こういう事態を想定し観光以外のビジネスを取り組む事はできなかったのか?」という思いが頭をよぎりました。
でも、コロナによる地球規模の経済停滞に直面して我々が考えたのは、こんな時だからこそお客さまを笑顔にしたい、喜んでほしい、ということでした。息苦しい毎日が続くなかで、非日常を求める旅行者に価値のある商品・サービスを提供したいという想いが、さらに強くなっていたのです。ベルトラの強みは企画力です。できることは限られていますが『心揺さぶる旅の体験を届けたい』という一心で企画力を磨き、世界各地のサプライヤーと一緒にお客様満足度を高める商品・サービスを創出してきたベルトラにしかできないことがあるはずだと。
そうした想いから生まれたサービスのひとつが7月にスタートした『ベルトラ・オンライン・アカデミー』です。アーカイブ型ではなくライブ配信にこだわっているのはリアルタイムで体験することによって、人とのつながりを感じていただきたいと思うからです。
移動が困難な中でも地域や国境を超えて人や文化と繋がることはできないかと考えるようになりました。そういう意味でも2020年は、原点に立ち返って新たな価値を発見した年と言えますね。
新型コロナの発生前はOTA(オンライントラベルエージェント)の需要が高く、経営資源の大半を投入してきましたが、旅行停滞期の今だからこそ同じ観光産業でも新たなサービスに経営資源を投入し、事業の多角化をおこない旅行回復と新たな観光系IT事業との2つで企業価値最大化を目指します。
ベルトラ・オンライン・アカデミーはこちらから
ーー2021年の取り組みについて教えてください。
原点回帰で観光産業を再開発
今、コロナ禍になり旅行ができない中でも旅は人類が存在する限り、永久的に存在する。
これからの時代にとって必要なものを、旅そのものの本質を見直すチャンス。
食をテーマにした世界のGOHAN、Umami Recipeを開発
旅と食は密接な関係です。国内はもちろん、世界の旅を通じて“食”は言葉の壁を超えた共通言語として、相互理解と文化交流が促進されます。特に日本食は世界的に人気があり、外国人が日本に旅行する際に最も楽しみにしている一つです。同様に日本の国民も国内旅行、世界の旅行では、その土地や文化を通じた食を楽しみに旅をします。
旅の原点を辿れば、旅とは本来、人類300万年の歴史において「食べるための旅」でありそれが生きる為であり、移動する目的でした。そして、旅先で定着した人類が、土地や風土にあった食材を創意工夫し、より美味しく食べられるようにした結果、郷土料理や食材が生まれています。私達はこの旅の原点である食をテーマにしたコンテンツにフォーカスし、旅行だけでなく日常生活でも届けられる、食の文化交流を届けていきたいと考えています。
世界の食文化を提供する「世界のGOHAN」。これは各国の料理を提供し、日本にいながら食文化を体験できるサービス。食材の配送だけでなくオンライン・アカデミーで生産者とつながる取り組みを同時におこなっています。もう一つは、訪日外国人向けに日本食を通して文化交流の促進、家庭料理としての日本食を世界に普及させる事を目的にした「Umami Recipe」というメディアコンテンツの開発をおこなっております。これらは当社が今まで培ってきたインバウンドのマーケティングを活用しながらも観光目的の食にテーマを絞り、長期化する旅行低迷期でも価値を提供し、日本の食文化をより魅力的にする取り組みをおこなってまいります。
世界のGOHAN@HOMEはこちらから
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クラウドファンディング型の観光サービス開発
旅行商品も過去に遡れば、客の希望する旅行計画が先にあり、プロ(旅行会社)が宿泊先や移動手段等を代行で手配して提供するオーダーメイド型でした。しかし近代ツーリズムにおいては、より大衆の人たちがリーズナブルな価格で旅行に参加できるよう、旅行会社が企画し、大型開発をおこない生産拡大と効率化されたマスマーケティングが王道となりました。
価格が安くなり使いやすくなることは良い事ですが、現在の多様化したニーズではこれらも限界を迎えてきている事はあきらかです。しかし一番大きな課題は観光サービスを提供する事業者と消費者の距離が離れてきている事に問題があると思っています。
私達は自社の強みである企画力を使って、この問題を解決しようと考えています。インターネットがあれば幅広い範囲で人を集められる為、よりニッチなサービスを開発し提供することが可能です。そして観光と事業者のコミュニケーションの距離を短くする。そうすることでスピーディーにサービスを開発し、よりリーズナブルな価格で商品が提供されると考えています。クラウドファンディングはそのニーズをテストマーケティングとして検証する場として適切だと思われます。
そして旅行会社というカテゴリも時代の変化によって今は曖昧です。私達ベルトラも旅行免許がなければ扱えない商品は今では半分以下です。デジタル化が進めば進むほど日常と非日常の境目は非常に曖昧になり、旅行業の枠組みとらわれている限り新たな価値は提供できません。この激動の変化がおこる時代において、新しい旅行商品を小規模で次々に登場させていくことが、時代の変化に柔軟に対応でき、成功する為の策であると考えています。
インバウンドは観光復興の最大テーマ、観光DXの開発
そしてもう1つは、リンクティビティで展開している日本の鉄道や公共交通機関や公共施設などの電子チケットを提供する、予約プラットフォーム事業です。鉄道事業者、航空会社をはじめ、歴史の長い企業や団体が多い国内の観光業界では、企業間のITシステム連携化は多くのハードルがあり、電子化の行く手を遮ります。しかし電子化によるシームレスな提供はインバウンドの取り込みには必要不可欠であり、それらを実現したいという共通の想いがあります。観光業界は依然として厳しい状況にありますが、観光庁が2030年の訪日外国人旅行者数6000万人、旅行消費額15兆円等の目標達成に向けた取り組みの継続を名言していることもあり、どの企業もできるだけ早く浮上のきっかけをつかみたいと願っているのです。
我々は今後、そんな各社をつなぐため、プラットフォーム機能の強化とITソリューションの提供、デジタル化の支援を積極的に行います。つまり、観光DXプロジェクトの推進です。また、その根底にあるのは、地方創生。国内の地方の赴くためにはさまざまな交通機関を乗り継いでたどり着く必要性があります。外国人が車を借りて移動することは極めて稀です。日本を訪れる外国人旅行者がチケット一枚で最終目的地まで自力で辿り着き、アクティビティを楽しめるようにしたいという願いです。それを叶えるために不可欠なのがITとデジタル技術なのです。
人に最高のおもてなしをするためには、お客さまの目に触れない作業を自動化することによって、残りの時間をより上質なホスピタリティを転換することです。我々もこの考えを見習ってITやデジタル技術によってお客様やサプライヤーと向き合う時間を増やし、本当に自信のある商品・サービスだけを提供していきたいと思っています。
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AFTER TALK
「体験」という心に残るサービス
インタビュー取材後、二木社長に旅行業を事業にしている理由を伺ったところ、
旅行業に留まらない、二木社長の想いについて話していただきました。
私の前職は美容師でした。お客様自身をヘアスタイルというジャンルで気軽に非日常体験を提供できる素晴らしい仕事でした。旅行業界へ転身したのも同じ理由で、日常とは違う何かを求め、世界を知り、旅先の体験を知り、もっと多くの体験を提供したいと思い、気がつけばこの業界に転身していたという感じです。美容業界も旅行業界も同じサービス業です。今まで経験できなかった「体験」を届ける、そして「人と人がつながる」心に残るサービスに携わりたいと思っています。主役であるお客さまに、どうすれば感動を与えられるか。笑顔にできるか。それを考えるのが私たちの仕事です。お客さまに生涯心に残る体験として、人と人、人と文化のつながりを今後も提供していきたいです。